原題:Forgotten Lady(直訳:忘れられた女性)
日本語版:1976年 NHK総合
実はこのエピソードは、自分にとってコロンボシリーズのベスト3に入る傑作である。もちろん、憎々しい犯人をコロンボがやっつける話も痛快で面白いが、このエピソードのように、犯人をなんとか助けてあげたい、という気持ちになれる話もいいと思う。もちろん殺人自体は責められるべき行為だが、犯人の過去と現在という長い時間軸を想像すると、何か感じるものがある。これはきっと加齢とともに実感する類のものだろう。年をとるにつれて、未来より過去のほうが長く重くなっていき、そして美化されていくものだから。
本と言えば、刑事コロンボ#13「ロンドンの傘」に登場した『不思議の国のアリス』の初版本は、本そのものは実在するがエピソード中にはそのレプリカになっていたが、今回のの本は、ご丁寧に日本語字幕も出しているが、タイトル自体が実在しない架空のものである。
この『マクトウィグ夫人の変身』(Transformation of Mrs.Mc Twig)に関して、コロンボが立ち寄った本屋の店員が概要を説明するシーンがある。日本語版のセリフを転記するのが面倒だったので、ネットから英語のセリフを拾って翻訳してみた。"That's a bubble of a book. You see Mrs McTwig was a floor scrubber who wins the Irish Sweepstakes.
Well, you can imagine the possibilities.
She goes to Switzerland for a face lift, then off to Paris for a Givenchy wardrobe, comprises herself in Rome with a Ribald Lothario, then falls in love with a young exiled prince from White Russia who happens to be a midget. When last seen they are frolicking together in the jungles of Africa on safari."
(Columbo)"That's quite a yarn."
"Well, you have to read it to appreciate the woody concept of romance and comedy."
上記の英文を機械翻訳(DeepL)すると下記のようになる。
(本屋)「それは本の泡だ。マクトウィグ夫人は、懸賞に当たったアイルランドの床掃除屋さんだったんですよね。
想像してみてください。
彼女は整形のためにスイスに行き、その後ジバンシィの衣装を着てパリに行き、ローマではロサリオと一緒に過ごし、白ロシアから追放された若い王子に恋をしますが、その王子は小人でした。最後に目撃されたのは、アフリカのジャングルでサファリに出かけた二人だった。」
(コロンボ) 「それはなかなか面白い話だな」
(本屋)「ロマンスとコメディのウッディなコンセプトを理解するには読んでみなければならない。」
さらに探っていくとこういう記述が、Twitter上で見つかった。
Based on the plot summary given to Columbo in the bookshop, this is a burlesque of Paul Gallico's very real "Mrs. 'Arris Goes to Paris," which I highly recommend.
(https://twitter.com/npetrikov/status/1272959770396418048?s=20より抜粋引用)
これを翻訳すると、
となる。この投稿を信じるなら、今回の本の元ネタがこれだということになる。
1970年代の米国の小物は毎回チェックしているが、今回は目立ったもの(個人的に興味があるもの)はなかった。島式ガスコンロとその上に乗っている調理器具、2台セットのオーブン、使用人が観ていた小型のテレビ、フィルムを切り貼りする器具(スプライサー)、そして異様に大きな灰皿。こんなところか。
☆ビフォア・アフター、コロンボ大変身
コロンボの衣装は基本的には背広にヨレヨレコートだが、今回は極端な感じだった。エピソードの最初のほうでの登場シーンでは、なんとパジャマの上にいつものコートを羽織っていて、さらに髪の毛もいつも以上に寝癖が激しい。そして、それの対になるかのように、最後のシーンではタキシードをびしっときめている。蝶ネクタイも似合っていて、コロンボ、いやピーターフォークのフォーマルな格好はこうなんだろうな、と再認識した。
☆そしてすべてはエンディングのために…
犯人は、過去の栄光に縛られ勝手気ままに生きている年配の女性。周りの男性にはそれをとめたりすることが出来ない。そして、自分の夢のために夫をも殺してしまうが、コロンボさえもその事実を掴んでも逮捕することをせず、彼女の運命を見守ることにするのだ。コロンボ・シリーズの中でも、最後に犯人を連行しないという稀有なエンディングだが、ラストの一連のシーンは涙を誘うもので、印象に残るエピソードだ。