刑事コロンボ#52 「完全犯罪の誤算」
原題:Agenda for Murder(直訳:殺人のためのアジェンダ)
日本語版:1995年 NTV
☆今回登場する車
犯人の車は「BMW」。様々なシーンから車種を特定するまでもなく、いきなりオープニングでロゴなどが大写しになる。リアバンパーに大統領選挙用のステッカーが貼ってあり、それをアップにするためだ。また、そのシーンの前に車内が映し出されるが、さすが大統領候補の右腕の車だけあって、自動車電話も装備されている。この頃は、自家用車にこの電話が付いていることが、一種のステータスでもあった。時代は、前回登場した携帯や今回の自動車電話など、いわゆるモバイルフォンに移行しつつあったわけだ。
日本では自動車専用アンテナが後部トランクあたりに外付けする形が一般的で、電話を装備していない(装備したくて予算の都合でできない)人は、そのアンテナにそっくりなパーツを自動車用品店で手に入れて、見栄のために付けていたりした(実は自分も)。
(たまに見かける、トランクから伸びたアンテナ。これって何を受信しているの? より)
☆ITとかDXとかではなくOA化が当時のキーワード
コンピュータの歴史は約80年、最初は軍事用に開発された大型機だった。一般の人が触れるようなサイズになったのが1980年代で、その後、このエピソードの1990年代では盛んにオフィスにPCが導入されるようになった。Office Automation、いわゆる「OA」である。PCを事務所に置くだけで仕事が捗ると考えた当時の人は、それを「OA化」と呼んだ。ネットはまだ普及していない時代だ。今回のエピソードでは、いたる所にPCが地味に映っている。そして、それと合わせてFAXや多機能電話機なども登場し、今回の犯罪捜査に絡んでくるのである。
(ISDNという文字が時代を感じさせる)
ストーリーの中で、電話機のリダイヤル機能をコロンボが捜査に活用するシーンがあるが、思い出すのが古畑任三郎のエピソード「矛盾だらけの死体」だ。しかも、このエピソードも議員の秘書が犯罪を犯すという、なんとなくコロンボをリスペクトしているようにも思える共通点がある。
☆電気製品も現代風に
日本では平成に入ったわけで、そういう元号のイメージでは最近の出来事のようで、でももう30年近い年月が経っている。ダブルカセットのラジカセ、四角い画面のテレビなど、自分にとっては結構新しい記憶の電気製品であるが、TVに回転式のチャンネルが付いていたりして、やっぱりレトロである。なお、良く見ると写真右下のTVは三菱電機製だと分かる。(だからどうってことはないが…)
☆日本なら「逮捕状」というやつだが?
刑事コロンボのシリーズでは、コロンボが犯人を追い詰めた段階で、犯人が自主的に罪を認めて終わるというパターンのはずが、今回はそのパターンにならず、犯人に逮捕状を見せて観念させる流れとなっている。相手は法律に詳しいので「逮捕状が出ているということは決定的な証拠が見つかったんだろう」と認めさせるためだろう。その後でコロンボが証拠を示すことになるが、何となく普通っぽい刑事ものになってしまった感じは否めない。そう言えば、画面ではよく分からないが、この書類、正式名はなんと言うものだろうか。
新シリーズはストーリーや映像は良くできているとは思うけど、やっぱり、コロンボらしさが少し薄らいでいる感じがしないでもない。 (なので、今回もちょっとローテンション)