suna8’s blog

還暦を過ぎたジジーの気まぐれ日記

【記事保存用】誤送金の回収方法とマスク

『デイリー新潮』2022年5月25日の記事を転載。(読みやすいように再構成)

 

4630万円誤送金 9割回収の奇跡を起こした阿武町顧問弁護士がとった“ウラ技”

 

 山口県阿武町で起きた誤送金事件は、劇的な結末を迎えた。回収が不可能と思われていた絶望的な状況から一転、町は誤送金した金額の9割に及ぶ約4300万円の回収に成功したのだ。町を救った“ヒーロー”は、昭和30年生まれの地元・山口県の弁護士。同業者の間でも、思いがけない奇策に注目が集まっているという。

オンラインカジノで使い果たした」と供述している田口翔容疑者(新潮社)

ドラマのような大逆転劇

「ポイントは回収先として、お金を持っていない24歳男性ではなく、決済代行業者に目をつけたこと。しかも、国税徴収法に基づき、わずかしかないであろう滞納税金に基づき、男性が決済代行業者に有していたとされる債権を全額差し押さえるという奇策に驚きました。やはり、自治体の弁護士は考えることが違うなと」

 こう興奮気味に語るのは、「渥美坂井法律事務所弁護士法人 麹町オフィス」代表の渥美陽子弁護士だ。渥美氏ばかりではない。いま弁護士界隈のTwitterには、奇跡の債権回収を成し遂げた阿武町の顧問弁護士に対し、「ドラマのようだ」「これぞプロ」といった賞賛の嵐が吹き荒れているのだ。

 大ピンチからの逆転劇を見せたのは、山口県で弁護士事務所を営む中山修身氏。山口県法曹界では名の知れた、御年67歳の弁護士である。誤振込み問題が発生してからは、中山氏に対する批判の声も大きかった。「なぜ、田口翔容疑者に使い込まれる前に、彼の口座の仮差押えに動かなかったのか」という声もその一つだ。

 だが、「債権回収業務は結果がすべて。使い込まれたと気づいてからの迅速な動きについては、見事だと皆が褒め称えています」(渥美氏)。まさに、9回裏に一発大逆転のホームランを放ったのである。

公序良俗に反する契約

 いったい中山氏はどのような手法で、不可能と思われた回収を成し遂げたのか。

 田口容疑者は、自分の口座に振り込まれた4630万円のほぼすべてを、オンラインカジノに使ったと供述している。

 カジノ口座への資金移動は、デビット決済と決済代行業者への振込みだった。賭博罪がある日本では、海外にサーバーがあったとしてもオンラインカジノでのギャンブルは違法。そのため、カジノサイトへ多額の資金を直接移動させるのは難しく、決済代行業者を利用するのが一般的だ。田口容疑者は約340万円をデビット決済で動かしたが、残りの約4300万円を国内3社の決済代行業者3社の口座に移した。

 結論から言えば、中山氏はこの3社に詰め腹を切らせたわけである。

「報道によると、阿武町は男性と決済代行業者との間の委任契約は、公序良俗に反する契約で無効だと主張したようです。この主張が通ると考えるならば、決済代行業者は、口座に入金されたお金を男性に返さなければならないことになります。阿武町は、男性は決済代行業者に対しこのお金の返還を請求できると主張して、男性の債権を差し押さえたのだと考えられます」(渥美氏)

 

恫喝

 その際、中山氏が持ち出したのが「国税徴収法」であった。金額は不明だが、田口容疑者はなんらかの税金を滞納していたようだ。

「滞納処分では、税金の徴収のために必要であれば、滞納額を超えて滞納者の財産を差し押さえることができます。実際、同法63条は、債権を差し押さえる場合には、その全額を差し押さえなければならないことを原則としています。だから、たとえ、男性が税金を滞納していた額が1万円であったとしても、男性が決裁代行業者に有していたとされる債権の全額を差し押さえることが可能だったのです」(同)

 それだけではない。その際に、法に基づき「恫喝」したのだ。中山氏は、決済代行業者の口座がある二つの銀行に対して、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」8条1項に基づき、犯罪による収益と関係する「疑わしい取引」が行われているとして金融庁への届出と、同庁の定める「マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」に基づく対応を求めた。

「あなたたちは怪しい取引をしていますよねと暗に圧力をかけたのです。決済代行業者にもやましいところがあったのでは。これ以上突っ込まれることは避けたいと考え、自ら町に全額を返金してしまったのでしょう」(渥美氏)

決済代行業者は泣き寝入りか?

 町は、田口容疑者の決裁代行業者に対する債権の全額を差し押さえたが、そこから取り立てることができるのは、あくまで、滞納されていた税金の額に限られる。差額は田口容疑者が自分のものとして、返還を求めることができた。他方、町も田口容疑者に対し、誤送金した4630万円の返還を求めることができる状況にあった。町は、これらの返還請求権を相殺する“ウルトラC的な手法”で、田口容疑者に対する債権の回収に成功したわけである。

 割を食ったのは決済代行業者である。現在、山口県警が捜査にあたっているが、海外で運営されているオンラインカジノの金の動きを追うのは困難で、田口容疑者が実際にギャンブルで使いきったかどうかはわかっていない。だが、もし彼の供述が事実ならば、決済代行業者は、田口容疑者がギャンブルで浪費した4300万円を自腹で穴埋めしたということになる。

「それが彼らのリスク判断なのでしょう。決済代行業者が男性に対して、損害賠償請求を検討するかもしれませんが、男性は無資力でしょうからそこから回収は難しいのでは」(同)

反マスク主義者

 しかも、影響は今回のケースにとどまらない可能性があるという。

「決済代行業者が阿武町からの請求を認めて男性からの入金を全額返金したということは、自ら公序良俗に反する取引をしていたと認めてしまったに等しい。今後、オンラインカジノで負けた利用者が、決済代行業者に対し公序良俗に反する取引だったため無効であり、入金額相当の債権があると主張し始めるかもしれません」(渥美弁護士)

 決済代行業者にとっては思わぬ波及効果が起きかねないというのである。見事、阿武町を救ったヒーローになった中山氏であるが、24日の記者会見では、突飛なことを言い出して、「変な弁護士」とのレッテルも貼られたという。

「マスクをつけないで会見に臨んでいたのですが、いきなり話の途中で、『申し訳ありませんけれども、私はそういう義務に従うつもりがない。遵法精神がない、同調しないタイプの人間ですので』と断り出したので、ざわつきました」(地元記者)

 これだけのことを成し遂げたのだから、多少の変人ぶりは目をつぶってもいいのかもしれない。

デイリー新潮編集部


最後の”オチ”でズッコケた。今どきの記者は何でもかんでもマスクに結びつけるのか。もちろんそういうセリフを吐いたのは事実だろうが、それと「半マスク」をつなげて、いかにもマスクしていない人を「変人」っぽく印象付けている。ミスリードっぽい文章で締めくくる記事に違和感を覚えた。しかも記事冒頭では”ヒーロー”と持ち上げておきながら、最後に落とすとはね。途中までは読みごたえのある記事で良かったのに残念だ。