初代ファミコンが登場する1983年を遡ること7年、1976年に8ビットマイクロコンピュータを搭載した初めての国産キット「TK-80」がNECから発売された。その当時は(少なくとも国内で)マイコンを使ってゲームをするという発想はなく、このTK-80は技術者の学習を目的として地味に製品化されたが、私を含む当時のマニアが飛びつき予想外の売れ行きを示したらしい。当時、友人の誘いに乗ってNECのショールームである『Bit-INN 名古屋』(私が投稿した食べログ記事にも登場させたり)に行ってマイコン情報を仕入れていた私は、店内でデモンストレーションされているTK-80を色々と触っているうちに、衝動買いしてしまった。
TK-80はトレーニングキット(TK)という名の通り、基板と電子部品のセットで自分ではんだ付けして組み立てなければならない。Bit-INNはそのフォローアップ、つまり組み立てたはいいが動かないユーザーの助け舟だったのだ。Bit-INNに稼働しないTK-80を持ち込んで、専門のスタッフに見てもらい更には(無料で)直してもらうこともやっていた。そこには自然にマイコン・マニアが集うことになり、店舗とそこのスタッフを中心にネットワークが出来ることになった。下世話なことを書けば、Bit-INN名古屋のスタッフの女性がかなりカワイイ人で、その点も密かな楽しみで集まっていた人も多かったのではないかと思う、自分も含めて。さらに常連になるとお茶さえも出るようになったりして、当時、学生だった私の授業が終わった後の常駐場所となってしまったりもした。
という昔話はおいておいて、最近になってメルカリで入手したTK-85。正常に動作しないジャンク品とのことだったが、ちょっとした“調整”で基本的には動くようになった。要は電源の接続が間違っていただけで(TK-85は5V単一電源だが12Vに繋げていた)満足に動かすまでには課題がいくつかあるが、いい買い物をしたと思っている。
課題として1番に解決する点はキーボードのチャタリング。これはネットを探っても同様の症状が出るとのことで、しかも解決手段は示されておらず(諦めるパターンがほとんど)、自力で何とかしなければいけない。
①物理的対策・・・接点復活剤を使用、あるいは部品交換
②電気的対策・・・チャタリング防止回路の追加
まずは①の対策の中でも、すぐに出来る接点復活剤の使用を実行することにしたが、キーボードが並んでいるためキーパーツの接点に復活剤を注入することがかなり困難。キートップを外しても金属のパネルが邪魔をするのだ。何とか横の隙間から手探りで注入するも、改善されたとは言い難い状況だ(多少はマシになった気がするが・・・)。
ダメ元で接点復活剤を各キーに多めに注入してキーを馴染ませるように叩いていたら、一部のキーを除いてチャタリングが発生しなくなった。主に「0」キーだけがまだ発生がちでおそらく1番多用するキーのため物理的に磨耗しているのかも知れない。気をつけて入力すれば使えないことはないので、さっそくテストプログラム(LEDにパターンを表示するだけの思いつきのもの)を打ち込んで走らせてみた。動きとしては問題なさそう。
しかし、最後にTK-80を触ってから約40年も経過しているのでハンドアセンブルも16進キーの早打ちも出来なくなってしまったのを実感した。命令一覧表を引っ張り出してシコシコと打ち込むオヤジであった。
●メモ:LEDに割り当てられているメモリアドレスは83F8H〜83FFH (TK-80と同じ)。
次なる課題は入力したプログラムの保存だ。クローゼットに数年前に購入したラジカセが眠っていたのでそれを使ってカセットテープに録音しようと思ったのだが……
(つづく)
◆リンク集◆
◆内容を確認したい書籍◆
マイコン制御とアセンブラ入門 : TK-85で学ぶ (技術評論社): 1982|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
マイコンゲーム21 : マイコン・キットと遊ぶ本 (産報出版): 1978|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
◆関連動画