刑事コロンボ#57 「犯罪警報」
原題:Caution: Murder Can Be Hazardous to Your Health(直訳:”注意:殺人はあなたの健康に害を及ぼす可能性があります”)
日本語版:1995年 NTV
☆今回登場する車
犯人の車は、まんまベンツ(1988 Mercedes Benz 560SEC - YouTube)。日本のバブル期に登場しているいかにもな高級車のイメージ。フロントグリルのわざとらしく大きいスリーポインテッドスターが下品かも?(個人的感想)。また、コロンボの愛車プジョーの少し上からの角度で見えるシーンが珍しいかも。そして、この2台が何故かぶつかってしまう。最終的に証拠となる”あるもの”を見つけるための伏線になってはいるけど、かなり無理やりでワザとらしい。
☆タバコ、タバコ、そしてタバコ・・・
自動車や酒は、撮影時でもリアルな商品を使っているが(当初、酒に関しては架空のラベルを作っていた)、タバコは諸事情があるのか、このエピソードでも定番の小道具「VICTORY KING」(以前とは商品名はちょっと違うが)という架空のタバコが登場する。しかも、くどいほど。まあ殺人の道具に使われているので当然だが、今では考えられない頻度である。
そして、そのタバコのサイドに印刷されている定番の文句「Caution : Cigarette Smoking May Be Hazardous to Your Health」が、今回のエピソードのタイトルとしてもじって使われている。喫煙者じゃなくても、原題を見ると思わずニヤリとする。
☆今回も登場するTV局の放送用プロ機材
録画用テープレコーダー、放送用カメラ、そしてモニター。カメラは別として、レコーダーやモニターはSONY製のようだ。SONYは放送用の機材のデファクトスタンダードだった。今でもそうかも知れないけど、当時は日本製が多用されていたようだ。それは、今回の他のシーンでも確認できる。
☆セキュリティ用カメラと録画装置
旧シリーズにも登場したセキュリティ用のカメラ。今回は進化しており、人間の動きをセンスして追尾するようだ。具体的にどういう仕組みかは別として(おそらく赤外線の応用か画像認識?)、かなりカッコいい。それで撮った映像を専用のデッキで録画する仕組みだが、デッキ自体は「TIMELAPSE」対応なので、本来なら一定の時間ごとに静止画を記録し、再生時には高速に見えるのが一般的な使い方のはずだが、今回は通常の速度で記録しているようだ。(オートチェンジャーがないVHSデッキの場合、TIMELAPSEを使わないと最大でも6時間ほどしか記録できないので、頻繁にテープ交換が必要。あるいは前回のエピソードみたいに巻き戻し・上書きされてしまう)
あと、「BLANK TAPE」などというわざとらしい(説明調の)ラベルを貼ったテープを用意しているとは、現実的には思えない。どうでもいい細かい話だけど。
☆まだまだテープが全盛の時代だった
音声記録はカセットテープ、映像記録はビデオテープ。今ではもうほとんど見ることはないメディア。性能的には劣るが便利な面もあった。その最たるものが”必ず前回の続きから再生できる”というもの。いや、便利でもあるが不便でもあるわけだが。特に、レンタルビデオを借りた時は基本的には不便となる。アンラッキーの場合、巻き戻されてない状態になっているからだ。直前に借りた人が巻き戻さず、店舗のスタッフもそれを見逃した場合である。手持ちのデッキの性能にもよるが、最後まで再生された120分テープを巻き戻すのにはそれなりの時間がかかる。観たいと思って再生ボタンを押した瞬間に落胆する気持ちは、ある世代以上にしか分からない感情だろう。(ビデオテープを高速に巻き戻すだけの機械も売られていたほど。機種によっては高速巻き戻し機能も備わっていたが)。
今の乗用車にはテープデッキは備わっていないだろうが、昭和な昔にはほぼ標準装備だった。しかも、フロントローディングというかサイドローディング?(そんな用語はないが)。あのスリットにテープを挿入する瞬間が気持ちいいのだ、実は。カセットを人差し指で押す、カシャッ、ルルル…、♬~
あと、ビデオ屋さんのシーンは意味深だった。米国の文化が関係しているのか、コートと紙袋の組み合わせに、何か”符丁”のようなものがあるのだろうか?さらに『HOLLY DOES HOUSTON』(和訳では”ホリー・ヒューストンを総なめ”)というタイトルも意味深で、何かを連想させるものなのかも知れない。
☆パソコンが大量に登場
これまでのエピソードでは、地味にPC一式が遠慮がちに登場していたが、今回はその呪縛が解けたのか、これでもかというほどに登場していた。確かに犯人の犯罪偽装にも使われ、コロンボ側の事件の解決の糸口になる形で絡んではいたわけだが。米国でもこの頃にPCが一般に普及したということなんだろう。さすがにここに日本製のPCが入り込む余地はなかったようだが。
☆実はフロッピーディスクもアナログ
パソコンは、いわゆるデジタル機器ではあるが、基本的にはアナログ技術の応用である。特にメディアは長年の間、アナログであった。今回登場するフロッピーディスクも、単にカセットテープを円盤状にしただけで、かなり原始的な原理を応用したものだったりする(個人的見解)。さらに、あのドクター中松氏が発明した という話もあって面白い。
地味なツッコミポイントとしてはキーボード操作がある。Deleteキーで一発消去とか、PrintScreenキーで即印刷とか、実際のアプリケーションでは考えにくい。当時のPC事情を鑑みても、これは演出上の割愛としか思えない。細かい話だけど。
ちなみに、今回のエピソードで使われていた3.5インチのフロッピーはFUJIFILM製。同じメーカーのフロッピーはまだ手元にあったりする。(さすがに2DDは無いしMaxellが1番多いし)